最寄り駅から二駅。たったそれだけの距離なのに、目的地に着く頃にはもう半分くらい疲れている。そんな日が、私にはよくあります。
双極性障害があると、移動そのものが思った以上に負担になる気がしています。バスや電車は「ただ乗るだけ」のように見えて、実際はかなり情報量が多いんですよね。席を選ぶ、人の視線をかわす、音や揺れを受け止める。気づかないうちに、脳はずっと何かを処理し続けています。
今回は、私が実際にやっている「移動中の脳疲労を減らす工夫」を、淡々とまとめてみます。同じように外出で消耗している人に、少しでも届けばと思っています。
1. 双極性障害の「脳疲労」は移動中に強く出やすい
結論から言うと、双極性障害の脳疲労は、移動中にとくに出やすいと感じています。理由は、外の環境が「処理すべき情報」であふれているからかもしれません。
バスや電車は情報量が多すぎる
電車に乗ると、目に入るものがとにかく多いです。広告、人の動き、窓の外の流れる景色。耳には走行音とアナウンス、誰かの話し声。
健康なときは自然に聞き流せていたものが、調子が悪いと一つひとつ「拾って」しまう感じがあります。脳疲労というのは、こうした情報を処理し続けることで起きる、脳のエネルギー切れのようなものだと私は理解しています。
💡 関連記事: 移動以外でも脳疲労は起きます。日常の刺激と脳の疲れについては「双極性障害と脳疲労|刺激との付き合い方」でも書いています。
人の気配を処理し続けてしまう
人が多い空間では、周りの気配を常に追ってしまいます。隣の人が動いた、誰かが立ち上がった。本当はどうでもいいことなのに、脳が勝手に反応してしまうんですよね。
これは「気にしすぎ」というより、感覚の処理が過敏になっている状態に近い気がします。意識して止められるものでもなくて、ただ静かに消耗していきます。
外出しただけで疲れる理由
だから、用事自体は大したことがなくても、外出しただけでぐったりすることがあります。「何もしていないのに疲れた」という感覚は、双極性障害のある人にはわりと共感されるところかもしれません。
体ではなく、脳が走り続けて疲れている。そう考えると、少し腑に落ちる気がします。
💡 関連記事: 脳が疲れる仕組みについては「双極性障害の「脳の疲れ」とどう向き合うか」もあわせてどうぞ。
2. 私がバスや電車で特に苦痛を感じる瞬間
電車やバスが苦手と一口に言っても、苦痛を感じる場面は人それぞれだと思います。私の場合は、いくつか決まったポイントがあります。
向かい合わせの席が落ち着かない
まず、向かい合わせの席が苦手です。正面に人がいると、視線をどこに置けばいいか分からなくなります。
見ているわけでもないのに、相手の存在をずっと意識してしまう。たった数十分でも、これがじわじわと効いてきます。
「どこに座ればいいか」で脳が疲れる
意外と消耗するのが、席選びそのものです。空いている車内でも、「どこに座るか」を考えた瞬間に、脳が少し疲れる感覚があります。
選択肢が多いと、人は判断にエネルギーを使います。調子が悪いときは、この小さな判断ですら重く感じることがあるんですよね。
視線や空気を気にしすぎてしまう
そして、車内の空気や視線を気にしすぎてしまう。誰も私を見ていないと頭では分かっていても、脳のどこかが警戒を続けています。
この「気を張り続ける感じ」が、移動を疲れさせている大きな要因だと思っています。
3. 脳疲労を減らすために、まず「座る場所」を固定した
ここで私がやったのは、難しい工夫ではありません。「座る場所をあらかじめ決めておく」。それだけです。
壁側や端席を優先する理由
私はできるだけ、壁側や端の席を選ぶようにしています。片側に人がいないだけで、処理する情報がぐっと減るからです。
端席は、双極性障害に限らず「安心できる席」として選ぶ人が多い場所だと思います。背中や横が守られているだけで、脳の警戒がいくらか緩む気がします。
“逃げ道が見える”だけで楽になる
もうひとつ大事にしているのが、「逃げ道が見えること」です。降りる扉が近い、すぐ動ける。そういう状況だと、不思議と落ち着きます。
実際に逃げるわけではありません。ただ「いつでも動ける」と分かっているだけで、脳の負荷が下がるように感じています。
毎回判断しないことで脳を節約する
席を固定する一番の利点は、「毎回考えなくて済む」ことです。乗るたびに席選びで悩まない。それだけで、脳のエネルギーを少し節約できます。
小さなことですが、こういう判断の省略が、移動の疲れにくさにつながっているように思います。
💡 関連記事: 「決めごとを作って判断を減らす」考え方は、回復の土台にもなります。詳しくは「双極性障害の回復|睡眠と「決めごと」のルール」で書きました。
4. 双極性障害の私が実践している移動中の脳疲労対策
席のほかにも、移動中にやっている脳疲労対策がいくつかあります。どれも地味ですが、私にはそれなりに効いています。
- イヤホンで刺激を減らす:音楽を聴くというより、外の音を少しやわらげる目的です。アナウンスや雑音が直接届かないだけで、脳がだいぶ楽になります。ただ、両耳をふさぐとアナウンスまで消えてしまって、「今どこの駅だろう」と不安になるんですよね。なので私は片耳だけにしています。刺激は減らしたいけれど、必要な情報は残しておく。そのバランスを取った結果が、片耳でした。
- スマホを見すぎない:移動中はつい見てしまうのですが、画面の情報も立派な刺激です。疲れている日は、あえてポケットにしまっておきます。
- 「疲れる前提」で予定を組む:移動で消耗することを最初から見込んでおく。用事のあとに予定を詰め込まない、というだけのことです。
感覚過敏のある人にとって、刺激を「減らす」発想は大事だと思います。頑張って慣れるより、入ってくる量を絞るほうが現実的かもしれません。
5. 「普通に乗れない自分」を責めるほど疲れていた
正直に書くと、以前の私は、こういう自分を責めていました。
周囲は平気そうに見える
電車の中を見渡すと、みんな平気そうに乗っています。スマホを見て、眠って、ごく当たり前に過ごしている。
その光景を見ると、「なんで自分だけ」と思ってしまう瞬間がありました。
でも脳の負荷量は人によって違う
でも今は、少し違うふうに考えています。同じ車内にいても、脳が処理している負荷の量は、人によって違うのだと思います。
平気そうに見える人も、本当のところは分かりません。そして私の脳は、同じ環境でも多めに消耗してしまう。ただ、それだけのことかもしれません。
無理に慣れようとして悪化した話
一時期、「慣れれば平気になる」と思って、わざと混んだ電車に乗っていた時期があります。結果は、逆効果でした。
慣れるどころか、外出そのものが怖くなっていきました。脳疲労は、根性で乗り越えるものではなかったんですよね。
💡 関連記事: 「ポジティブに頑張る」ことがしんどさにつながる話は「ポジティブが自分を苦しめるとき|「ただ生きる」3ステップ」にも書いています。
6. 疲れにくい移動は、「頑張る」より「設計」が大事だった
いろいろ試した末に思うのは、移動を楽にするのは「頑張り」ではなく「設計」だということです。
空いている時間を選ぶ
可能なときは、混雑する時間を避けます。同じ路線でも、空いている時間帯なら脳の負担はまったく違います。
少し早く出る、少し遅らせる。その程度の調整で、ずいぶん変わる気がします。
乗り換えを減らす
乗り換えも、地味に脳を使います。ホームの移動、時間の確認、人の流れの読み取り。
多少遠回りでも、乗り換えの少ないルートを選ぶようにしています。「楽なほう」を選ぶことに、罪悪感を持たなくてもいいと思っています。
“少し楽”を積み重ねる
ひとつの工夫で劇的に変わるわけではありません。でも、「少し楽」を積み重ねていくと、移動全体の疲れ方が変わってきます。
脳疲労の回復は、こうした小さな設計の積み重ねの先にあるのかな、と感じています。
💡 関連記事: 疲れにくい暮らしの組み立て方については「双極性障害と疲労|暮らしを少し楽にする工夫」でも触れています。
7. バスや電車で疲れるのは、弱さではなく脳の消耗だった
最後に、いま思っていることを書いておきます。
脳が常に安全確認をしている感覚
移動中の私の脳は、たぶんずっと「安全確認」をしています。危険があるわけでもないのに、周囲をスキャンし続けている。
その作業が、静かにエネルギーを使っているのだと思います。
「気にしすぎ」では片付かなかった
長いあいだ、私はこれを「気にしすぎ」だと思っていました。でも、気の持ちようでどうにかなるものではありませんでした。
これは性格の問題というより、脳の処理特性に近いのかもしれません。
今は“自分に合う乗り方”を優先している
だから今は、「普通に乗ること」を目指すのをやめました。代わりに、「自分に合う乗り方」を探すようにしています。
それで移動が少し楽になったなら、それでいいのだと思います。
補足:JRの障害者割引という選択肢
最後に、移動の負担に関わる制度の話を少しだけ。
JRの電車で101km以上を乗る場合、精神障害者保健福祉手帳を持っていると、運賃が半額になることがあります。手帳に「第1種/第2種」の記載があること、顔写真があること、有効期限内であること。そういった条件はあるようです。
ちなみに「第1種/第2種」は障害の等級とは別物なので、混同しないようにしたいところです。
買い方は地域で少し違うみたいです。関西圏は紙の乗車券を窓口で購入する形が基本のよう。一方でJR東日本は「障害者用Suica」を広げていて、精神障害のある人も一部対象になってきているようです。
ただ、正直なところ、101km以上というのは1時間以上乗り続けることになります。体調的にはかなり厳しい距離だと思います。それでも、福祉は使えるものは使う、というのが私のスタンスなので、念のため書いておきます。
💡 関連記事: 障害年金など、双極性障害で使える福祉制度については「双極性障害と福祉支援|障害年金という選択肢」にまとめています。
まとめ:移動で消耗しているのは、自分だけじゃない
最後に、要点を整理しておきます。
- 双極性障害の脳疲労は、移動するだけでも大きく消耗する
- 席選びや人の視線も、脳にとっては立派な負荷になっている
- 無理に「普通」を目指すより、「疲れにくい乗り方」を設計するほうが現実的
- 工夫は地味でも、「少し楽」の積み重ねが効いてくる
バスや電車で疲れてしまうのは、弱さではなく、脳が消耗しているだけなのだと思います。
もし同じように移動で消耗している人がいたら、「自分だけじゃない」と伝えたい。そんな気持ちで、この記事を書きました。

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