「普通に生きているだけなのに、どうしてこんなに疲れるんだろう」。
もしあなたが今、そう感じているなら、この記事は少し役に立つかもしれません。
私は双極性障害と診断されてから長い間、
「普通」に合わせようとして、結局そのことで自分を壊しました。
先に結論を書いておきます。
双極性障害にとって、社会から距離を取ることは「逃げ」ではなく、
再発を防ぐための技術になり得ます。
なぜそう思うようになったのか、私の体験と、
実際に続けている方法を書いていきます。
「普通に生きる」が、ずっと苦しかった
私は長い間、「普通」に合わせようとしていました。
朝起きて、学校や仕事へ行く。
人と会話をして、空気を読んで、ちゃんと返事をする。
LINEを返して、愛想よくして、疲れていても頑張る。
みんながやっていることだから、
自分もやらなければいけないと思っていました。
でも、双極性障害の私にとって、
その”普通”は、ずっと無理をしている状態だったのだと思います。
周りから見れば、ただ生活しているだけに見えたかもしれません。
けれど頭の中では、常に神経が張り詰めていました。
人の表情。
声のトーン。
場の空気。
電車の音。
突然の会話。
全部を同時に処理しようとして、脳がずっと疲弊していたんです。
(脳の疲れについては、別の記事「混合状態の翌日と、そのまま引きずる日の話」でも詳しく書いています。)
双極性障害で「社会から距離を取る」と決めた理由
人混みや会話だけで、脳が削られていく
特につらかったのは、「刺激」です。
双極性障害になってから、人混みや音への耐性がかなり落ちました。
電車に乗る。
スーパーへ行く。
会話を続ける。
それだけで、頭の奥がじわじわ疲れていく感覚がありました。
会話が重なると、途中から言葉が入ってこなくなる。
何を話せばいいのか分からなくなって、頭が真っ白になる。
帰宅したあと、玄関にへたり込んで、
服を着替える気力すら残っていない日もありました。
当時の私は、「疲れやすい自分が悪い」と思っていました。
でも今振り返ると、あれは怠けではなく、脳疲労だったんだと思います。
人混み、音、過密な予定。
こうした「明確に消耗するもの」から距離を置くのは、
症状管理の一部として、わりと自然なことなのかもしれません。
「みんなできてるのに」が、自分を追い込んでいた
一番苦しかったのは、周囲と比較してしまうことでした。
みんな毎日働いている。
普通に通勤している。
人付き合いもしている。
なのに、自分はそれだけで限界になる。
そのたびに「甘えているだけなんじゃないか」「もっと頑張らなきゃ」と、
自分を追い込んでいました。
でも実際は、”普通に合わせ続けること”そのものが、
回復を遠ざけていたんですよね。
刺激から離れない。
常に気を張る。
休んでも脳が休まらない。
そんな状態で回復できるわけがありませんでした。
距離を取ることは「逃げ」ではなく「再発予防の技術」
ここからは少し、医学的な背景にも触れておきます。
ただ、私は医師ではないので、断定的なことは書けません。
あくまで「そういう考え方があるらしい」
という温度で読んでもらえたらと思います。
再発を繰り返すほど、失うものは大きくなる
双極性障害は、再発率が高い病気だと言われています。
そして、再発を繰り返すほど、
社会的な後遺症が大きくなりやすいとも指摘されています。
躁状態のときは、活動過多や人間関係のトラブル、
浪費などで、生活そのものに影響が出ることがあります。
逆にうつ状態を無理に押して「普通」を維持しようとすると、
回復よりも消耗が先に進んでしまう。
結果として、崩れやすくなる。
そう考えると、人混みや過密な予定から距離を置くことは、
ただの「逃げ」とは少し違う気がします。
再発を避けるための、撤退。
そういう言い方のほうが、私の感覚には近いです。
調子がいいときこそ、余力を残すという考え方
私が一番つまずいていたのが、ここでした。
「調子がいい=もう大丈夫」だと思って、予定を詰め込んでしまう。
でも「調子が良い」ことと「治療が終わった」ことは、
イコールではないようです。
むしろ、調子がいいときこそ意識的に休む。
余力を残して行動する。
これが再発予防では大事だと言われています。
「もう少しできる」と感じても、あえて休む。
私にとっては、この感覚を身につけるのが一番難しかったかもしれません。
私が実践している「社会から距離を取る」具体的な方法
ここからは、私が実際に続けている負荷調整の方法を書きます。
「距離を取る」と言っても、つながりを全部断つわけではありません。
あくまで「刺激の量を減らす」「負荷を調整する」という感覚です。
生活リズムを固定する(社会リズム療法)
双極性障害では、生活リズムの乱れが
症状悪化につながりやすいと言われています。
私が意識しているのは、こんなことです。
- 起床・就寝の時刻をできるだけ一定にする(休日も平日と±2時間以内に抑える)
- 朝、起きたらカーテンを開けて光を浴びる
- 朝食・昼食・夕食の時刻をなるべく揃える
- 徹夜・夜更かしを避ける(一晩の徹夜でも躁転することがあるそうです)
このリズムを生活の軸にする考え方は「社会リズム療法(SRT)」と呼ばれています。
薬物療法と並行して行うと効果がある、という研究もあるようです。
完璧にやろうとすると続かないので、
私は「だいたい守れていればいい」くらいの気持ちでやっています。
ちなみに、「風呂、昼寝、夕食作りの時間を決めておく」も入れています。
刺激の量をコントロールする
人混みが苦手なので、
外出する時間をずらすようにしました。
スーパーも、混む夕方ではなく、空いている時間に行く。
SNSは、夜は見ない時間を作る。
正月の親戚の集まりのような「束の間の興奮」も、
実は再発のきっかけになりやすいと言われています。
そういう予定がわかっているときは、
前後の日にあえて何も入れない。
これだけでも、ずいぶん楽になりました。
特に「予定がわかっているときは、前後の日にあえて何も入れない」が大きい。
なので、よく休息をとる時間としてあてています。
記録で「自分の波」を見える化する
これは地味ですが、効果を感じている方法です。
起床・就寝の時間、食事の時間、人と会った時間と、そのときの気分。
これを記録していくと、「自分の波のパターン」が少しずつ見えてくるそうです。
というのも、ライフチャートで線グラフを2月から始めて記録を付けている私ですが、
この4か月、まったく似たようなグラフにはなっていません。
ただ、完全な軽躁状態にはここ二か月なっていないな。
くらいの成果はありましたが。
「この曜日の午後から落ち込みやすい」
「活動時間がズレた翌日は波が大きい」。
そういうことがわかると、先回りして予定を調整できます。
(ライフチャートのつけ方は「双極性障害|ライフチャートとセルフカウンセリングで気づいた「何もできない日の正体」でも書いています。)
仕事の負荷を調整する
過労は、双極性障害にとって大きなリスクだと言われています。
私は、体調によって量を調整しやすい働き方を選ぶようにしました。
うつ状態のときは、仕事を抑える。
安定したペースを保つ。
「これはやるが、これは後回しにする」と優先順位をつける。
復職するときも、いきなりフルタイムではなく、
1日数時間・週数日から段階的に増やす。
無理のない、持続可能なペース。
「完璧な生活」ではなく、そこを目指すようになりました。
限界を感じたときの「緊急休息」のとり方
それでも、限界が来てしまうことはあります。
そういうときのために、私が決めている手順があります。
- まず現場から離れる(仕事なら有給や休職、家庭なら一時的に誰かに引き継ぐ)
- いつもの睡眠時間+1時間を、数日続ける
- SNSやゲームなど、情報過多になるものを控える
- 休むことに罪悪感を持たない
心の疲れは、体の疲れと違って、一度壊れると簡単には戻りません。
だから「壊れてから休む」のではなく、「壊れる前に休む」。
その場でできる小さな休息もあります。
5分だけ目を閉じて視覚刺激を遮断する。
4秒吸って、4秒止めて、8秒吐く呼吸を繰り返す。
静かな場所へ一時的に移動する。
こんな小さなことでも、脳の負荷は少し下がる気がします。
会社を休むときは、「双極性障害だから」と言わなくても大丈夫です。
「体調が悪い」「頭痛がひどい」と伝えるだけでも、
休む理由としては十分なこともあります。
(障害年金、自立支援医療、手帳などの制度については「双極性障害と福祉制度|使える支援まとめ」で詳しく触れています。)
それでも気をつけたい、距離の取りすぎ
ここまで「距離を取ること」を肯定的に書いてきました。
でも、ひとつだけ補足させてください。
距離を取りすぎることや、自己判断で大きく生活を変えることには、
注意が必要だと思っています。
特に、薬を自己判断でやめてしまうこと。
これは再発のリスクを高めると、はっきり言われています。
「距離を取る」というのは、あくまで負荷の調整です。
治療や支援まで断ち切ることとは、別の話。
私は、生活の調整は自分でしますが、
薬や治療方針については主治医と相談しながら決めています。
ついでに一か月分のライフチャートも持っていきます。
孤立ではなく、調整。
すべてを断つのではなく、刺激を減らす。
このバランスだけは、忘れないようにしています。
【結論だけ知りたい人へ】要点まとめ
ここまで読む時間がない方のために、要点だけまとめます。
- 双極性障害にとって「普通に合わせ続けること」は、回復を遠ざけることがある
- 人混み・SNS・過密な予定など、消耗するものから距離を取るのは症状管理の一部
- 距離を取る=逃げ、ではない。再発予防・自己防衛の技術と考えられる
- 具体策は「生活リズムの固定」「刺激量の調整」「記録」「仕事の負荷調整」
- 限界が来たら、現場から離れて睡眠を確保する
- ただし薬の自己中断や、治療を断つことは避ける。
距離を取るのは「負荷の調整」まで
今は、「壊れないこと」を優先している
今でも、完全に元気になったわけではありません。
人混みで疲れる日もあるし、会話だけで脳が止まりそうになる日もあります。
でも以前より、「壊れる前に距離を取る」ことができるようになりました。
無理に普通へ戻ろうとしない。
刺激が強すぎる場所へ行き続けない。
疲れたら休む。
そういう調整を、”逃げ”ではなく生活防衛として考えるようになったんです。
社会から距離を取ることは、
必ずしも悪いことではないのかもしれません。
双極性障害の脳には、安心できる環境や、
刺激を減らせる時間が必要なこともある。
私は、”普通”に合わせ続けて壊れてから、
ようやくそれに気づきました。
壊れてからでは遅い。「逃げ」という語すら出てこない。
壊れてからの私はただひたすらに、自分を守っていた。
ただそれだけでした。
それが何年も続き、やっと回復してきたころに振り返ると、
「ああ、自分を守る期間が必要だったんだ」と思うようになりました。
今は在宅で就労継続支援B型事業所で働いています。
障害年金ではなく、久々の自分で働いて得たお金は、
一般的には少額と言えますが、
私にとってはやっとここまでこれた。
という気持ちにさせました。
でも外出中に目線を下に向けて歩く癖は治らず。
人の顔を見るのは私には刺激が強すぎます。
でもまだそれでいいかな。
と、いつか目線が上に行くこともあるかもしれませんから。
仕事中も記事を書いているときも、
足元で猫が寝ているのを見ながら、今はそう思っています。

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